(この記事は、2021年7月26日にfusetterに書いた文章を写しました。週間少年サンデー33号に掲載された『MAO』第101話「冥命堂」のネタバレを含みます)
8巻第2話のデート回についての与太話ですが、第101話のネタバレを含みます。摩緒はデート中に菜花がかわいいものが好きだと言ったことを、乙弥くんに話したのでしょうか。
第101話で冥命堂さんが刀を打ち直すことになった時、だれが刀を持つかの会話になります。冥命堂さんは菜花が刀を持つように勧め、「かわいい拵えにしてやるぞ」と言います。それを受けて乙弥が「菜花さんかわいいの好きですよね」と菜花に言い、菜花は「いや…」とだけ返します。摩緒が「普通でいいです」と冥命堂さん伝えます。
無表情での乙弥の言葉に可笑しみのある瞬間です。ところで、この「かわいいの好きですよね」という言葉は、ふだんの菜花の様子からの洞察で出たのでしょうか。たしかに乙弥は目敏いようですし、菜花に対しても摩緒より気が利きます。過去には菜花がかわいい着物を借りてうれしそうにする描写があり、乙弥は世辞を言いましたが、摩緒は見向きもしませんでした。ほかの場面でも、菜花がかわいいものを見てはしゃぐ姿があったのかもしれません。
しかし、菜花がかわいいものが好きだと明に言ったのはデートの時です。その場に乙弥はいませんでした。となると、摩緒が菜花の発言を含めてデートの詳細を乙弥に話したのかもしれません。摩緒の純真さに心が大変温まります。
そもそもあのデート自体が乙弥の助言があって実行されたように見えました。着物を返しにきた菜花に、乙弥は「…すぐお帰りに?」と少し含みをもたせた言い方で尋ねますし、デートから帰宅した摩緒に首尾よくいったかを確認しているからです。もし乙弥の発案でないとしても、初めての洋食を体験してきたことくらいは、摩緒は乙弥に共有するでしょう。その上さらに、
摩緒「好きなものを買ってあげようといったら、匂い袋を選んでいたよ。菜花はかわいいものが好きらしい」
乙弥「へぇそうですか(ご存じなかったのか)」
といった会話があったかもしれません。
乙弥の「菜花さんかわいいの好きですよね」に対する菜花の「いや…」も、「かわいいものが好きっていうのは、武器の拵えなんかの話じゃなくて…」と言いたいのをこらえたようにも見えますし、急になにを言い出すのかと戸惑っているようにも見えます。そうです。賢い乙弥くんには菜花が好きなものはとっくにお見通しなのです。もちろん摩緒への気持ちも。ご馳走さまでした。
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